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  2. 2007年12月

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新作その2 (第一話継続)

今回もまたですね~そっち方向の記事にしなくてもうしわけありまへん。ではごゆっくり~




「おまえ、どうしたんだ?もしかして迷い込んでたとか。」
校庭の片隅にはちょうど石椅子とテーブルがあって、オレはそこで詳しい話を聞いてもらうことにした。
「うん、その、体育館の場所がわからなくて...」
「マジかよ...」
呆れた。あまりの恥ずかしさに、うつむいて頬を赤く染め、小さな、本当に小さな声で答えを告げた彼女はまるで小動物のようだけれど、でもそれは基本的に理由になってない。
だって、体育館って校門をくぐってから右に曲がってすぐだろ?それも今日は入学式でデカイ看板あるしなぁ。
「......」
うつむいたままの彼女を見て、ツッコミは一切入れないでおこう。でなきゃ可哀想だから。
いや、ちょっと待って。なんか引っかかるぞ?つまり
「新入生?」
「え?」
「あ、いや、おまえ、新入生なのか?」
「はい、去年の年末引っ越してきたんです。」
「そうか...」
道理で印象にないわけだ。もともと小さな町だし、それに人の顔を覚えるのにはちょっと自信はある。
「あの...」
おかしいな~なんでこんなちっぽけ町に来たんだろう、親の仕事の関係か?いやありえない、こいつどう見てもどっかのお金持ちのお嬢様だ。じゃ、ブルジョワがこの町に来てなにを企んでるんだ?侵略か?戦争か?ひょっとして宇宙人?未来人?超能力者?衝撃的な事実だなおい
「あのぉ...すみませんけど...」
いや、んなバカなでも可能性がゼロだとも言えないなしかし変だなこれはあれ前後ズレてないかいつオレはこいつがお嬢様だと決め込んだ冗談じゃない。
「っ...」
待て待て早まるな冷静になれクールになれアイスマンになれ!そうだオレはアイスマンだつまり手から冷気を放出し敵を凍りつけることが出来るこれは立派なヒーローだマーヴェルだ!オレは世界を救えるこの悪の宇宙人を打ち破れる次元世界の平和を守れるんだ怯むなオレ勝ち取れオレ!

キーン コーン カーン コーン

「はっ!」
4時間目の授業の終わりを告げる音だった。
とても素敵な音ではあったが、なぜかその前の記憶はなくなったような気がした。どうやら何かの妄想にふけてその内容の恐ろしさにショックし、自我の意識は自分自身という存在を維持する為の保護機制が作用したようだ。
何を考えてたんだろうオレ。
「気付くと、彼女はまだそこにいる。」
「...」
なんか落ち込んでるよ
「あぁごめん、まだ話の途中だったね、んで?」
「入学式はもう終わったのですが...」
「あ」
「......」
これはまずい。事情は事情だけど、オレのせいで彼女は入学式に出席できなかった。
「入学式...」
「ごめんな、オレのせいで。」
「ううん、いいんです、方向音痴のわたしのせいです。真琴さんが悪いわけではありません。」
自覚あるのかよ...
一つため息をついてオレは立ち上がり、背伸びをしてみる。とても気持ちよかった。
「オレは昼食に行くけど、おまえはどうする?」
「教室を探してみます。」
なぜだか突然元気が湧き上がったようで、微笑んで見せてくれた。
「じゃあな。」
「はい!」
変な子だ。

※        ※        ※

不味い。
何でこんなに不味いんだろ。
それも不思議なくらいにこんな不味いものをオレは三年間食べてきた。
あのおばさんに文句の一つ投げつけたいぐらいだ。
「おい芹澤、ニュース!ニュース!」
不意に声かけられた。
「ん?だれだおまえ。」
また見知らぬ顔だ。
「記憶喪失かよおまえは!」
「あぁあそれそれ、どうやらさっき事故にあって、その前の記憶を失ったようだ。」
「え?」
「たぶんそれは血塗れた悲惨な事故だった。幸い命だけは助けられたようだけど、でも大切なものをたくさん失くした。たとえばおまえとの思い出とか」
「そっか...オレのことを忘れたか...」
彼は深いため息の後、こう言った。
「楽しかったよ、相棒。じゃあな。」
そして彼はなにかを決意したように、重い足踏みして教室を後にした。
「死ぬなよ、柿原」
南無。

「て、ふざけんなぁああああああ!」
そして彼はやがて戻ってきたのだ!
「今、名前呼んだだろ!」
「いや、呼んでないっす。」
「呼んだろ!」
「ご幻聴かと。」
「あんたねぇ...自分の親友をからかっててそんなに楽しいのかな」
「親友じゃないだろ?気持ち悪いこと言うな。」
「ギィイイイイイイィィーーーーーーーー!!」
「人間の言葉でしゃべれ。」
それだけ言って、コップの中に入れておいたお茶を啜る。いつもと同じ最高な日常だ。
「あんたメチャクチャ薄情なひとッスね!」
「柿原、おまえは何も分かってない。」
あくまで声を殺して継続。
「え?」
「人間とは、いつ死んでもおかしくはないものだ。」
「...」
「車にぶつかって死ぬ、病気かかって死ぬ、眠る最中だって死ぬんだ。人間とは、つまり肉の塊なんだよ。脆すぎる。」
「いつも一緒であるオレたちの未来を想像してみろ。もしオレは事故に遭って命を落としたなら、おまえどうする?」
「...」
「そう、一番が死んだら、そこにあるのはただの生地獄だ。オレを失ったおまえはもう生きてはられない、そしてそこから堕落し壊れるんだ。」
「...」
「なぁ、柿原。オレはそんな心配をしてたんだ。だからこそおまえだけでも生きていけっていう人生の試練をな。」
「...」
「...」
「せっ」
「...?」
「せ、り、ざわ...」
なんか泣き出してるぞ。あと鼻水も。
「セリザワァアアアアアアアーーーーーー!」
いきなり抱きついてきた。
「お、おい!なにすんだ、こら!」
漢ふたりで抱きつくのは変な誤解を招くだけだ。それにこの町のことだ、きっとあっという間にすごい噂になるにちがいない。
ちょっと想像してみる。

野次馬A 「おい、あの芹澤と柿原が男同士なのに抱きついてだよ。」
ちょうど通りかかった生徒Aがこの話を聞いて、多分こうなる。
生徒A 「おい、あの芹澤と柿原がホモだって。」
そしてちょうど通りかかった教師Aがこの話を聞いて、多分こうなる。
教師A 「まさかアイツらはバイだったとは...」
そしてちょうど通りかかった主婦Aがこの話を聞いて、多分こうなる。
主婦A 「芹澤家の息子は柿原家の長男とは不純交友で、相手を妊娠させたらしいわ。」

一瞬背筋にとんでもない悪寒は走った。
というわけで、今オレに与えている選択肢はつまり二つだけだ。

1.抱き返す
2.蹴り飛ばす

これはもちろん2のほうを選ぶしかない。
何の迷いもなく蹴り上げてから蹴り飛ばす!
「とりゃっ!」
そして当の柿原は宙に綺麗な曲線を描いて飛んでいき、周りから観客の歓呼は絶えることなかった。
奥義?華離斗葉棲 を 習得した!
ような気がした。

「食堂で何の騒ぎ?」
「?」
振り返ってみると、すぐそこにポニーティルをしたスタイル抜群、尚且つひどい邪険な顔をしてる女の子が立っていた。
「これぞ我がクラスの誇り、乱世に咲く一輪の花、町一の兵、委員長殿でござる。彼女はかつて南極大陸にて過酷な修業の数々を完璧になり遂げ、南極グマを一個師団ほぼ全滅状態にした赤き悪魔―-霧乃殿か」
「なにを言っている。」
一瞬彼女の目はきゅぴーーーーんという音が立てるほどに光り、その殺意だけでクラス内を墓場に変える力を持っているように見えてしまった。
「いや、なんでもないす。」
「あ、そう。」
なんとかしてご機嫌を取るようにしなくちゃ...
「それにしてもひどい顔ですね。」
「っ...」
あの霧乃が震えている!それも武者震いだ!
またマズッた...言葉を口に出す前にちゃんと誤解を招かないようにしないと...
「ひ、ひどい顔で悪かったね」
シューーーーーーーーーーーーッ!
こうなる。
飛んできたのは何かは知らないけど、ただ当たったら絶対死ぬという本能があって、幸い生まれつきの反射神経がいいから、頭が回る前に体のほうは反応し、なんとか避けた。
「おまえ何投げつけたんだよ!当たったら死ぬぞ!」
「あーら、わたし何も投げつけてませんよ、みんなも見たでしょう?何も 投 げ つ け て な い ということ。」
静かだ...静か過ぎる...
「おまえ卑怯だぞ!」
「悪いのはそっちのほうよ!あんたたちこそ、そこで何騒いでんのよ!」
「え?あ、これはつまり、柿原への愛の指導だ。ってかなんだその哀れな負け犬を見るような目は!」
「芹澤...あんたついに...」
「な!オレじゃないぞ!」
「じゃあ、こいつがね。」
「ああ」
床に倒れそのまま夢を見ることになった柿原を見下ろす。
「せ~りさわぁ、ずっと、いっしょ...だよ...」

「......」
「なんか言ってるよ。」
「んなことない。」

※        ※         ※

午後の授業はどうも出る気にはならないから、旧校舎を回ることにした。別にこんなところが好きなわけじゃない、ただ学校じゃここが一番落ち着く場所で、先生に見つかることもあんまりなく、ここだけが喧騒から離れていてまるで別の世界のようだから。
適当に選んで、入る。
適当に座って、寝る。
そうでもしなきゃいろいろ無意味なことを考えそうだ。
なんで不良になったんだろ。
オレはいったい何がしたいだろ。
ほしいものは何なんだろ。
分からないことは多すぎて頭が短絡する。
いままで自分の進路とか将来とかそんなのあんまり考えてない。どう考えればいいか分からないからだ。別に考え付いたって、進路を決めたって、実際にどうすればいいかもわからない。
多分、オレはこのまま卒業し、生きる為に毎日毎日、ただ無性に作業着着て工事現場で働き続けるだろう。
それも悪くないと思った。
しかしこの世の中の何もかもなそんな簡単な話じゃない、そう世間に教え込まれたんだ。
もしいまの自分は変えられるなら、普通の学生として勉強し、普通の子供として勉強し、やがて普通の社会人として勉強するんだろ。そして普通の人間のように結婚し、子供を育て、生活していく為に忙しい毎日を送るだろう。
それでもわかんない。
それでもわけがわかんない。
なんでそのように生きるしかないのか、今のオレにはさっぱりわからない。
芹澤真琴という自分の名前さえ意味わかんない。
なにもかも、みんなすべて投げ出したいぐらい、いつもぐちゃぐちゃな気持ちで吐けそうになる。
「自分のことは自分で決めろ!」
誰かに言われたことがあった。
この世界というカラクリの仕組みも分からずにいったいどうやって決めるんだよバカ!
オレはまだ前に進めるか?
同じ高みに、辿り着けるのか?
だから、窓から、空を、ボーっと、眺めるしかない。
このブラックボックスのような教室から唯一見られる外の世界。
別のどこかに無限に繋がるもの。
それで何も考える必要なく、ただ自分自身を自虐的なまで苛むだけで済む。
バカ騒ぎだってそういうことになる。
「who the get luna.」
言っててバカバカしい。
そんな自分は世間からバカにされるというならそれでもいい。 

不良には2種類はある。
理由あって荒れるもの。
理由がなくて荒れるもの。
片方の不良は荒れる理由を失ったら多分もとに戻れる。
もう片方の不良はもともと理由がないから荒れたんだ。
理由だっていろいろある。荒れる理由、荒れない理由。人によって違ってくる。一概には言えない。

目の前の教室のドアノブに手をかけ、そのまま入る。
ずいぶんと古い教室だ。窓辺にピアノ一台あって、これも相当の年代もので、どうやら音楽室のようだ。まぁいい、広いから寝心地もいいだろう。
 
※         ※         ※

夢。
夢を見た。
まだ、まだ小さいころの夢とまったく同じ内容の夢だった。
夜空に月より何十倍もデカイもう一つの惑星があって、大陸、川、海、雲、すべてが輪郭はっきり映っていて、とても懐かしい匂いがした。目を細めて見ると、その惑星にはたくさんの緑と青に満ち溢れて、生物いて、人もいた。
「地球だ。」
そう見えていて、しかしどこか違う気がした。地球と同じ顔をした地球じゃない地球。そしてその「地球」のちょうど赤道あたりに、時々赤い何かが衛星軌道上を秒速何千キロメートルのスピードで走ってた。
あれは何なのかはオレはきっと知っている。でも何度も何度も思い出そうとしたけど何も思い出せなかった。
オレはその赤いなにかに、その惑星に手を伸ばして取ろうとしたけど、それは叶わないことだと夢の中の自分にも良く分かっていた。
そしてオレは泣いた。この光景に包まれる何かのために、あんまり刺激の強さにホトホト泣いた。まるで無力な子供のように。
オレはきっと、その光景の中身をほしがっていると、そう信じてきた。

※         ※         ※

起きたらすでに一日の授業が終わり、オレンジ色の暖かい光は窓から差し込んで、その光を放射する怠けた本体は桐の葉の隙間から透いて見えてくる。
やはりオレは秋が好きなんだなと感心しつづ、だるい上体を起して、枯れた涙の流し跡を手でゴシゴシ擦って大きな欠伸をしてみる。
「やっと、起きたようですね。」
あの小さく控えめな声がすぐそこから伝わってきた。
振り返って見ると、あの華奢な人影がピアノの前に控えている。
「ピアノ、好き?」
「...」
なんとなく、言い出したくなくなってきて、多分嫌いだと言ってもコイツも弾くのをやめるつもりは無いだろうし、そして何より、オレの言葉一つでこの目の前にあるすべてを壊したくはない。
彼女もそれを事前から分かってるように、オレの返答なんか最初から聞く気はなくだろう。そして彼女はそのまま右手をすこし上げ、弾き始めた。
「べートーヴェン、ピアノソナタ、悲愴。」
それはテレビとかドラマとかラジオとか店頭で流すCMとかには良く使われる曲だけど、そんな物騒な曲名があるとは知らなかった。
「おまえピアノ弾けるのか?」
唐突に聞いてみた。
「ちょっとだけ。まだ幼いころから学んできたのです。」
彼女は手を止めることも振り返ることもなく、目を少しだけ細めて答えた。多分いま、この瞬間だけ彼女の周りの世界は、すべてその旋律に溶け込んで夢幻の空間が自然的に築き上げてるんだろう。そう思いつづ、オレはいつの間にかそんな感性に感染され、素直に感心した。
「すごいなぁ。」
「まだまだ遠いです。」
「え?まさかプロになるつもりなのか?」
「いえ、ただ、自分が満足できるまでまだ程遠いです。」
そりゃプロまんまじゃねぇか。

第一話 to be continued
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秋本まこと

Author:秋本まこと
一日30時間で願いたい。
多分コイツは何も考えていない。
VIRIDIAEVO@hotmail.com勝手に追加しておk

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